こんばんは、紗那教授です。
10月も中盤に差し掛かろうとしているのに、真夏かよと叫びたくなる日々が続きますね。
今回は、先日の文学フリマ大阪でゲットした『人間裏街道』(成瀬 紫苑様 著)の感想と紹介になります。
概要
死にたがり×生きたがり 八月一日、高校三年生のアリスは自ら命を絶とうと思い立つ。だが突如目の前に謎の少年が現れ、裏の世界、通称《裏街道》という場所に連れられることになる。裏街道は現実で嫌なことがあった人たちが逃避する為の暗闇と静寂に包まれた世界。そこの住民の目は黒い。人との関わりを避けてきたアリスも元々死を覚悟しているだけ、最後くらいはと物語の舞台に上がる覚悟を決める。天真爛漫で無邪気な少年メイ。冷静沈着で読書家の美青年ガラク。住民と接するうちに彼らがどんな過去を経て裏街道に来ることになったかが気になり始める。
人間裏街道 | Polaris* (wixsite.com)
感想

体裁
A5版で、ページ数は122となっています。
2段組みになっているので、読み応えがあります。
印刷会社は、コスパ最強のちょ古っ都製本さん。(またナカーマ(゚∀゚)
イラストもご自身で描かれているという、いわゆる最強パターンの作り手さんです。
感想
「死にたがり」というキーワードから、読む前は「自殺」をテーマにしている小説なのかなという印象を受けました。
あとがきにも記載がありますが、やはり創作物で「自殺」をメインに取り扱うのはナイーブなことであり、小説投稿サイトによっては禁止しているところもあります。
しかし、本作のテーマは「自殺」ではなく「現実逃避」にフォーカスしています。
個人的にこの小説のジャンルは「ホラー」という印象を受けましたが、「ホラー」なシーンはあるものの、冷静に読んでいても思わず感情移入してしまうヒューマンドラマです。
遅読の僕としてはとても珍しく、一日で読み切ってしまうほど、のめり込んでしまいました。
著者の成瀬様のホームページを拝見すると、まだサークル歴は間もないことが窺えますが、この実力は彗星です。
(創作歴やサークル歴が浅く、とても高いクォリティの作品をいきなり出してくる創作さんのことを、僕は頭の中で勝手に彗星と呼ばせていただいています)
元々各々の登場人物は表の世界で訳あって裏世界に来てしまっただけに、メインキャラクターはもちろん、サブキャラクターのバックグラウンドも作り込まれていました。
個人的にはアリスの級友だったミカとの再会が、ショッキングでありつつも、彼女が裏世界に来てしまった理由に同情してしまいます。
ホラー描写があるヒューマンドラマということで、ラストは伏線を回収しつつ、素敵な締めくくり方をされたと思っています。
最後に余談ですが、成瀬様の作品はホラーとは対照的なものもあるみたいですので、それもぜひお迎えしてみたいですね。
色んなジャンルの小説を書いている身としては、とても興味深いです。
こんな人におすすめ
・ホラーは苦手だけど、ホラー要素は欲しい人
・作り込まれた人間描写が読みたい人
・「現実逃避の世界」というキーワードにピピっとくる人
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